交差点(まだ歯抜け…)

 

 

………。
あ…長森…
向かい、信号を待つ姿…
長森だった。
一瞬目が合った気がした…
でも、長森に表情の変化はない。
………
やっぱりもう他人なんだな、オレたちは…。
それを突きつけられたくなかったのに…
こんなにも簡単に…
最後に出会ってしまうなんて…。
信号が青に変わる。
人の波に押されるように、お互い、歩き出す。
長森はオレを見ない。
オレも長森を見ない。
他人同士だから。
他人とは、黙ってすれ違うものだから。
痛くない…。
痛いのはオレだけだから。
近づき、距離が狭まり…
そしてふたりは、すれ違っていった。
………
さようなら。
大好きだったひと。
………

長森「捕まえたっ…」
………
長森「
やっと捕まえたっ…
………
長森「
浩平っ、捕まえたよっ
………
青信号が点滅を始める。
長森「
また逃げられないように、知らん顔してたんだよっ
長森「
すぐにも走って…正面から抱きしめたかったけどっ…ぐっと我慢してっ…
長森「
ぼろぼろ泣きだしそうだったけどっ…ぐっと堪えてっ…
赤に変わった。
浩平「痛い…離してくれよ…」
長森「いやだよっ…」
長森「
またわたしだけ置いて、逃げちゃうもんっ…
耳をつんざくクラクション…
浩平「大丈夫…逃げないよ」
逃げない。
長森「ほんとう?」
浩平「ほんとう」
ほんとうだ。
長森「ただ…」
ただ…
正面から、抱きしめたいだけなんだから。